実業団スポーツのこれからの形
少し遅ればせながら、日清食品グループ陸上部が廃部となりました。
強豪チームで、私が好きな選手もこれまで多数在籍していたので驚きました。
今回は、スポーツ選手のこれからのスポンサーについて考えてみました、
陸上長距離選手の進路
陸上長距離では、プロ選手というのはほとんどいません。
大抵は、実業団の陸上部に所属し、フルタイムではないものの、ある程度仕事をしながら競技を続けています。
日清も比較的少ない方ですが、勤務時間は確かに存在します。
日本における長距離種目の花形は、なんといっても駅伝でしょう。
日本人は駅伝が好きですので、どの駅伝中継も高いの視聴率、注目度も高いのです。
そのため、企業が自社の広告塔である選手に求めるのは、駅伝での活躍です。
トップの実業団陸上部は、ニューイヤー駅伝などで結果を出すことが使命としてあります。
知り合いの実業団選手曰く、駅伝のMVPの方が日本選手権優勝よりもボーナスが高いそうです。
駅伝は団体競技ですので、駅伝に力を入れるとなると、ある程度の人数を陸上部として雇用する必要があります。
7人ぴったり、というわけにもいかないので、余分に人数を採用してるわけです。
ニューイヤー駅伝出場チームは、2019年で37チームです。
それぞれに10人所属していたとしても、370人です。
実際にはもっと多くの人数がいるでしょう。
これを多いか少ないかというのは、ここで明言できませんが、少なくとも他の陸上種目と比較すると圧倒的に多いでしょう。
短距離中距離、跳躍や投擲でも実業団選手は存在しますが、長距離のように競技に集中できる環境にいるのは限られたトップ選手のみです。
そういう意味では、長距離選手は駅伝のおかげで、恵まれた環境作りが国内にあると言えます。
これは実業団に限らず、大学や高校でも駅伝人気は高いため、そこにお金をかける学校は多くあります。
箱根駅伝は陸上界で最もお金がかかってる試合ですし、このようなビッグイベントは他の種目にはありません。
しかしながら、今回の日清食品グループ陸上部の事実上の廃部はこの駅伝天国に風穴をあける出来事でした。
駅伝神話崩壊への一石
日清陸上部の成績は、全盛期に比べると落ちてはいますが、それでも優秀な選手もそこそこ所属しており、やはり強豪チームという印象です。
しかしながら、今回のニュースでは、東京五輪マラソンの選考であるMGCを控えた2選手以外を解雇ということでした。
これは日清の駅伝撤退を意味しており、この2選手も東京五輪に出場できなければこの先どうなるかは分かりません。
いきなりの駅伝からの撤退のようですが、思い返してみればその兆候は陸上界に少しずつありました。
私が思い出せる範囲でまず思い立ったのは、2012年ロンドン五輪マラソン日本代表の藤原新選手です。
彼は元々実業団ランナーでしたが、フリーの期間をいくつか挟みつつプロランナーとして活躍しました。
私は当時から、駅伝主体の長距離界があまり好きではなかったので、彼を応援していました。
しかし、ロンドン五輪を決めた東京マラソン以来鳴かず飛ばずで、プロランナーとしてはあまり大成しませんでした。
彼が成功すれば、長距離界も変わるのでは?と期待していたので、私は残念でした。
しかし、今になって思えば、このチャレンジは長距離界に少なからず影響があったのではと思います。
この後、学生時代から天才の呼び声が高かった、大迫傑選手が所属していた日清食品を出て、NIKEのオレゴンプロジェクトという海外のチームに移籍します。
オレゴンプロジェクトは世界最高峰とも言われてるチームで、所属している選手はメダリストやそれに迫る選手ばかりです。
この環境で大迫選手がやっていけるのか不安視する声もありましたが、その後破竹の勢いで5000m、10000m、マラソンと日本記録を更新し続けます。
長らく、長距離種目で世界と渡り合う選手はいなかったため、世間の注目が集まりました、
世間の注目という点では、おそらく最も有名な長距離選手は、公務員ランナー川内優輝選手でしょう。
彼はフルタイムで働く公務員でありながら、世界選手権に出場するレベルのマラソン選手です。
2018年には31年ぶりとなる、ボストンマラソン日本人優勝を達成します。その後川内選手は2019年よりプロランナーになる旨を表明しました。
このように、駅伝以外でも世間に注目される選手が多く登場しました。
これは日本長距離界の歴史では珍しいことでした。
過去の瀬古利彦、宗兄弟などは全て実業団ランナーであり、駅伝も走っていました。
この駅伝以外へ、世間が注目し始めたことが、今回の日清の件に少なからず影響を与えたのでは?と考えています。
これからの社会人スポーツ
今後、日清の後を追って駅伝撤退をするチームも出てくるかもしれません。
それによる社会人駅伝の人気低迷も考えられます。
そうなると、これまで駅伝があったから陸上を続けられた人たちが、実業団では競技を続けられなくなるかもしれません。
これからの長距離選手は、今と異なる形で競技を続ける術を考えないといけなくなるでしょう。
それではこれからの生き残り方とはどのようなものでしょう?
私が考えたのは以下の二つです。
まず、今まで通り企業に広告塔として雇ってもらうことです。
それでは、今までと同じように感じますが、こらからはもっと多様な広告塔の形があっても良いと思うのです。
例えば、イケメンの選手なら、アイドルのような活動をしながら競技を続ける。
今でもマラソンをするタレントはいますが、これはタレント業もするマラソン選手、というイメージです。
それ以外でも、陸上以外に何かもう一芸秀でるものがあれば、その人気+陸上競技という形で広告塔の役割を果たしうると思います。
注目を集めて企業の名を広めることが広告塔の役割ですから、極端な話競技力が高い必要は必ずしもないと思います。
もう一つの生き残り方は、セルフブランディングによって、自身の支援者を得ることです。
前者とも似ていますが、こちらは自分から発信することで熱狂的ファンを作るという方法です。
今現在も、箱根駅伝の優勝校の選手のSNSはかなり多くのフォロワーがいます。
プロの選手の中にはYouTubeチャンネルを持った選手もいます。
インターネットが発達したこの世の中では、自身の情報を発信する方法は数多くあります。
ネット上でインフルエンサー達がやっていることを、陸上選手もやれば多くの支援を受けることができると思います。
もちろん、それを継続的なものにするかどうかはその人にかかっていると思いますし、そのノウハウを提供する企業が現れても良いかもしれません。
今回提示したどちらの形においても、選手が自身の価値をどれだけ世に発信できるかにかかっているように感じます。
スポーツのトップ選手は誰も、魅力ある選手ばかりです。
その魅力をいかに世に伝えるか、これをスポーツ選手には学んで欲しいです。